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企業型プロジェクト受講者の体験談 その2

参加者データ:博士後期課程2年 男性 (社会人学生)
プロジェクトタイトル:食品中の微生物迅速検査キット提供事業

企業型プロジェクトへの参加

 この授業の受講を決める際に、学生が卒業後に社会で活躍するための準備をする授業に、社会人学生の私が参加してもよいものかと、少々躊躇しました。しかし、その内容は社会人から見ても結構面白いものでしたので、一般の学生と一緒に受講してみることにしました。

  私は企業に勤める社会人ではありますが、雇われている側の、また研究者としての見地に立っていますので、経営者として全体を見渡すということもありません。しかし、私は、経営側の見方や考え方を意識しないと、全体を把握することやその中で自分が担っている研究の位置づけがきちんとわからない、と常に考えていましたので、この機会に学んでみようと思いました。

授業について

 さて、授業ですが、これはたいへんよい雰囲気の中で進みました。

 授業の最初の頃は、受講生の起業プランを紹介するプレゼンテーションが続きます。それについて受講生同士でディスカッションを行い、また、講師からはプランを進めていく上での様々な課題やアドバイスが与えられます。このディスカッションでは、それぞれの受講生の提出する起業のアイディアを練り上げていきますが、どうすればそのプランをよい方向へ持っていけるかを皆でアイディアを出し合いながら話し合いました。ディスカッションは、全体を通してとても前向きでよい雰囲気でした。

  このようにして、最初に提出されたプランは、回を重ねる毎に改良され、変化して行きます。最初は具体的でなかったアイディアが、ディスカッションや講師からのアドバイスを受けてより具体的な形になりました。5−6回の授業ではありましたが、授業が盛り上がると、6時あるいは7時まで授業が続くこともありました。皆さん、この授業には結構はまったのではないでしょうか。

  さて、私自身のプランは、食品中の微生物を迅速に測定する検査キットの販売、でした。私は、私の所属する企業と東京海洋大学が共同で進めている、品質検査手法の改良に関する研究の企業側の担当者として大学で研究を行っていますので、その研究テーマに関するプロジェクトを作成したものです。その販売計画を立てるわけですが、実際にそれを売り出せるのか、マーケット、コスト、現在の検査市場などの調査を行いました。私は企業に所属していますので、これらの調査については知識としてわかっていることを再確認しながら進めることができました。しかし、全く手がかりのない学生にとっては、難しいものであったかもしれません。特に講師は数字にはシビアで、その数字の裏づけ、事実に即したものか、などについて、幾度となく鋭い指摘がありました。このように講師からのアドバイスを受けて改良を重ねていくうち、当初のプランはフォーカスが絞られていきました。

  この授業では、新規事業の立ち上げの作業、すなわち、今現在ある販売などのルートに乗せるのではなく、全く新規のものを立ち上げるノウハウを学ぶことができました。私は新しい事業を立ち上げるノウハウなど、全く知りませんでしたので、これはとても新鮮でした。マーケティングについても普段は意識していませんでしたが、そのようなことを意識させる良い機会になりました。

授業を終えて

 普段、自分の視点は、自分の部署や事業に近いところに回ってしまいがちです。しかしこの授業では、自分のプロジェクトを通して、経営者の視点になって全体を鳥瞰することができ、自分自身の研究の姿を全く別の視点から見ることができました。研究を続けているうちに狭くなりがちな世界をエクスパンドしてくれる効果がありました。

  また、雇用される側だけでなく、経営側の見方、考え方を学ぶことができました。私はそのような視点からの意識がないと仕事の入口と出口はきちんとわからないと考えていましたので、それを具体的に学ぶことができ、とても役に立ちました。

  この授業を通し、「社会はどうやって動いているか。」という、普段はあまり考えることのない事を、再認識しました。同時に、学生にとっては、学生の世界と実社会をリンクさせることができる授業であると感じました。

 しかしながら、授業は全くのゼロからの出発でビジネスプロセスを考えさせるものでしたので、予備知識のない学生にとって何もわからないままでの難しいスタートであっただろうと思います。自分のプランを立てる前に、今ある企業での仕事がどう回っているか、既存のビジネスについて具体的に学ぶプロセスを入れることで、より作業がしやすくなったのではないかと思います。特に持ち帰っての作業が多い授業でしたので、そのようにした方が調査の時間も短くなり、就職活動などと重なるD2も参加しやすくなるのではないでしょうか。

  最後になりましたが、今後、何かのプロジェクトを作り、他者への説得をする必要が生じることがあっても、今回学んだことを生かせば、かなり説得力のある資料を作ることができると思います。この授業は、社会人の私にとっても期待通りのとてもよい授業でした。